人間が学校というフェンスを出ると、そこは、
ドラゴンワールド(現実の、悪意に充ちた世界)なわけだ。
地球上には三十億だか、四十億だかの人間がいて、
おまえはその三十億プラス一の余り者にすぎない、
おまえのことなんか誰も関心を持っていやしない、
生きていようと死のうと、こっちの知ったことか、
みたいな扱いを受けることになる。
ある人間がだめになるというのは、そういうことなんだよ。
どうやってそれに対抗するかといったら、
やっぱり自分の歌をうたい続けることだと思うね。
『うるせえ、おまえのその変な歌をやめねえと張り倒すぞ』
かなんか言われて、
それでだめになっちゃうことだってあるけど、
張り倒されてもまだ歌い続けることだ。
もちろん、ドラゴン・ワールドにあっては、
明日の飯代をどうしよう、
今日の部屋代をどうしようなんていうわずらいもある。
それはしようがないから、思いわずらい、
駆けずり回りながらでも、自分の歌だけはうたい続けるわけだ。
リチャード・バック(イリュージョンあとがき 訳:村上龍)